先週後半、東京ビッグサイトで3日間にわたって開催された「CRM展示会」のセミナーを受講し、CRMに関わるテーマについて、6人の論者の話を聞いた。所要時間はトータル約9時間、参加費用は合計約8万円であり、決して安くはない時間と金の投資である・・・。
このようなセミナーは、一方通行の講演であるし、受講者の興味・関心がバラバラなので、講師としても一般的な話にせざるを得ない。したがって、それほど得るものは大きくないのが現実である。(これから学ぼうとする方は別として)
しかしながら、そのような表面的な話だったとしても、CRMを論じる人々それぞれの基本的な考え方や切り口を知ることはできる。だから、私にとってセミナー受講は、私の専門とするCRMという枠組みの中で、自分のオリジナリティを維持し、他の方と異なる独自のポジションを確保するためには欠かせない、一種の競合調査(おおげさだが)である。
さて、今回の論者の方々の話の中で目立った言葉は「ブランド」だった。これまでそれほど意識されて使われることはなかったと思うが、今年は、「CRM」という枠組みの中に明らかに「ブランド論」が取り込まれてしまっている。
このことは、実はCRMの潮流としては、自然な流れである。CRM初期においては、その「理念・概念」が提示された。次いで、顧客とのリレーションシップをどのように獲得・維持するかという「コミュニケーションノウハウ」の体系化が進み、同時にそれを支える「情報技術(IT)」が大きく進展した。
しかし、現時点では、まだ欠けている部分がある。
それは、顧客と‘どのような’関係を構築すべきか、という肝心かなめの部分である。
一般理論としては、「顧客との良好な関係」ということになるのだが、それを因数分解して具体的なレベルまで落とし込まないと、具体施策には展開できない。
これは、まさに「ブランド」(ブランディング)の領域の話になる。なぜなら、顧客が商品に対して持つ知覚イメージ(ブランドポジション)こそが、顧客と商品(ブランド)とのリレーションシップのあり方を表すものに他ならないからである。
この、顧客とのリレーションシップという視点でブランドを見る切り口では、私の知る限りでは、ハーバード・ビジネススクール助教授、スーザン・フーニエ氏のBRQ(Brand Relationship Quotient)が最も実用性が高いように思う。興味のある方はWEBでもいろいろと資料が拾えるので当たってみて欲しい。
(5年ほど前になるが、広告代理店在籍中、CRMがまだそれほど話題になっていない時期に、フーニエ氏にお会いする機会があり、BQRについて直接話を聞くことができたのは、今思えば実に幸運だった)
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