Weekly Matsuoty 2003/07/01
顧客の認知
 
某専門誌を発行する出版社から、定期購読 を募集するFAXが送信されてきた。しかし、 私は2年ほど前から、この専門誌の購読者で ある。

今回が初めてではないので、「既購読者の 名前は、FAX送信リストから削除した上で 送信お願いします」とお節介なアドバイス 付きでFAXを返信した。

残念ながら、このような既存客に対する配 慮にかけたプロモーションは珍しいことで はない。日経BP社も、しばしば事務所宛に 「日経ビジネス」や「日経情報ストラテ ジー」の定期購読促進DMを送ってくる。 しかし、私は両誌とも10年以上前から読み 続けている愛読者である。おそらく、両誌 とも自宅宛の送付であるため、事業所宛DM リストとの重複チェックをやっていないの だ。

日経BP社ほどの大手が、なぜ重複チェック をやらないのかわからない。確かに、送付 先が違う場合など、2つのリストの名前が 同一人物であることを確定するのは難しい 場合がある。しかし、確実に購読者である と判断できる方はいるはずだ。私も、そう 判断されてもおかしくない読者の1人であ るので、おそらく、手間やお金がかかると いった理由で重複チェックをやっていない のだろう。

しかし、こうしたことは、CRM的には最低 の行為である。顧客を「顧(個)客」とし て認知できない企業ほど、顧客を失望させ るものはない。ある調査によれば、顧客に とってロイヤルティを高める効果があるの は、特別割引やポイントプログラムといった プロモーション的テクニックよりも、 「顧客」としてふさわしい扱いを受けるこ とだという。

その第一歩が、「お客様」として顧客を 認めてあげることである。たいそうな金 をかけてCRMデータベースを構築し、どん なに顧客の詳細なプロフィールをかき集め たところで、現場において「お客様」とし ての認知ができなければ、無駄な投資に 終わる。

人は往々にして、相手を認めてあげること より、自分を相手に認めてもらうことに注 力しがちたが、企業レベルでも、製品や サービスの認知向上ばかりに熱を上げて、 顧客を認めることがおろそかになっている。

製品の認知も大事だが、企業が顧客を認知 することは、顧客維持のために決定的に重 要である。このことは、あまりにも当たり 前に思えるのだが、実践できない企業が多 いのはどうしてだろう?
 
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