Weekly Matsuoty 2003/09/24
プッシュとプルの使い分け
 
以前、私が契約している生命保険の元営業 マンの「アフターフォローの弱さ」につい て書かせていただいた。彼は、契約後、会 社で印刷された年賀状を出す以外は、1度 も連絡することなく、数年後に退社してし まったのである。

最近、別の保険会社の営業マンからの提案 があり、10年前の現保険契約時と現在では、 私の保険ニーズが変化していることに気付 かされ、保険会社を切り替えた。

こうした手続きを進める中で、自分のこと ながら面白いと思ったことがある。

解約した生命保険会社の元営業マンが退社 した後、別の営業マンが「保全責任者」と して、私の担当となっていた。保全責任者 とは、解約手続きの場まで面識がなかった が、毎月一回、手作りの小冊子を送ってき ていた。

小冊子の内容は、保険についてのマメ知識 といったところで、既契約者のリテンション (保険業界では「保全」と呼ぶ)施策のひ とつとして、有効なツールであろう。実際、 私もまだ会ったことのない彼に、好感を抱 いてはいた。

しかし、いかんせん、保険という商品は、 契約する側にとっては、あまり気の進まな い買い物であり、また仕組みがわかりにく いため、自ら、じっくり再検討したり、営 業マンに連絡しようとはなかなか思わない ものである。

その結果、新たに現れた別の生命会社の積 極的な提案によって、この保全責任者は顧 客を奪われる結果となった。

毎月、小冊子を送付するといった、継続的 なコミュニケーションは、それによって 信頼感を醸成し、顧客側からのコンタクト を待つという「プル」型のマーケティング である。

しかし、取扱商品によっては、ただ顧客か らのコンタクトを待つだけでは不十分な場 合があるということである。顧客の状況に 応じて、「プッシュ」型のマーケティング、 すなわち、売り手からの積極的なコンタク トも、適宜組み合わせる必要があるという ことである。
 
close