Weekly Matsuoty 2004/02/02
アナログ爆弾
 
昨年末、友人に赤ちゃんが生まれた。友人 宅はたまたま通勤途中にあるため、出産祝 いを自分で持っていくことにしたが、なか なか行く時間が作れず、先日ようやく渡す ことができた。

もちろん、購入したデパートから出産祝い を送ってもらえば、「手間いらず」なのは わかっていたが、なんとなくそうするのは いやだったのである。こうした気持ちは、 私に限らず、多くの人が持つ自然な感情だ と思う。

一方、個人ではなく企業が顧客に対して、 このような誠意、感謝などの気持ちを示す コミュニケーションを行う際には、その 効果だけでなく、効率性を重視せざるを得 ない。例えば、お中元やお歳暮を担当者が いちいち取引先に持参していたら、実費に 加えて人件費が加わり、その手間とコスト は、短期的には利益を減少させることが明 らかであり、なかなか実行できるものでは ない。

近年はインターネットという、低コストの コミュニケーションツールが浸透したこと もあり、どちらかといえば、企業は効率重 視のコミュニケーション施策を組みたてが ちである。

しかし、効率重視によって、本来の目的で あるはずの、「誠意」や「感謝」の気持ち が届かなくなってしまう可能性があること を忘れてはいけないだろう。

カリスマ社長として知られる、小山昇氏 (株式会社武蔵野 代表取締役社長)は このことを理解しており、従業員に対して 自筆の手紙やハガキを取引先に送ること、 あるいは自ら足を運んで訪問することを 義務づけている。しかも、人事評価とリン クさせているのである。

便利な電話やeメールではなく、自筆の 手紙やハガキ、個別訪問のことを小山氏 は「アナログ爆弾」と称し、多いに奨励 している。小山氏は、手間や労力をかけ ることで、伝えたい「気持ち」がより効 果的に届くと考えているのである。

実際、私もある会社の方から、年に2-3 回ほど自筆のハガキを頂くが、他に同じ ことをする方がほとんどいないことも あって、毎回強く印象に残る。わざわざ こうして手間をかけて送るという行為に よって、その方の誠意は確実に私の心に 届いている。

企業の場合、予算やマンパワーの問題も あり、なかなか難しいことではあるが、 ただ単に便利・効率的という観点から コミュニケーションツールを選択すること がないよう注意する必要があるだろう。

まあこんな偉そうなことを書きながら、 自分は手書きのハガキなどほとんど出し たことがない。情けない・・・
 
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