相手のことがわかった、と思った瞬間から、
相手との関係は崩れ始めると言った人がい
た。
何事も、手元にある情報は限られた断片的
なものであり、かつ、過去のものにしか過
ぎないのに、短絡的・表面的に解釈して理
解した気になるのは、非常に危険である。
青山に「キサナドゥ」というディスコがあ
る。このディスコは、1979年から1年余り
六本木で営業していた伝説のディスコが
復活したものだ。流れる音楽は、70年代、
80年代のディスコ・ミュージック。
メディアなどでは、若かりし頃ディスコに
通った人が、当時を懐かしがって行ってい
ると、まことしやかに伝えられ、なるほど
そうかと受け入れてしまっていた。
しかし、当時ディスコでDJをやっていた人
によるとそうではないという。その元DJに
よれば、渋谷には渋谷の、六本木には六本
木の踊り方があるそうだ。だから、フロア
で踊っている人を見れば、以前どのあたり
のディスコに行っていたかがわかるらしい。
しかし、彼が、キサナドゥでの踊りを見る
限りでは、どの踊りでもない。彼の推測に
よれば、以前ディスコに通っていた人では
なく、当時は行きたくても行けなかった人
が、今になって行っているということだ。
彼の推測も100%正しいとは限らないだろ
うが、情報を表面的に解釈してわかった気
になることの恐さを思い知らされた。
ともかく、こうした根拠のない思い込み
は、「自分は何もわかっちゃいないのだ」
というくらいの、極端なまでの謙虚さを
持ち続けることにより、徹底して排除して
いきたい。
自分は、Googleを日常当たり前に使ってい
るからと言って、まわりのみんなもGoogle
を知っている、使っているという思い込み
は捨てよう。(全体の利用率は、実際には
10%程度にすぎない)
自分が土日休みだからといって、休日は週
末という固定観念は捨てよう。サービス経
済化が進んだ現在、土日働き平日働いてい
る人もたくさんいるのだ。元旦の朝から電
車が動いているのは、鉄道会社の人々が
元旦から働いているからである。
また、首都圏に住んでいる、働いている
からといって、首都圏を基準に判断するの
も止めよう。例えば、2003年に青森県弘前
市で実施された若者対象のアンケートの
結果によれば、女性に対し、「相手男性の
年収がいくらなら結婚してもよいか」とい
う質問に対する答えとして、「200万円」
という答えが多数あったらしい。
自分がわかっていないことは、本当にたく
さんある。
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