今回は、ブランディングの方向性を考える
ことに有効な、一つの枠組みを紹介したい。
これは、オグルビーワンの方々の講演内容の
ポイントをまとめたものである。貴重な知見
を開示していただいた、オグルビーワンの
方々にこの場を借りてお礼申し上げます。
なお、説明のわかりやすさのため、私自身の
解釈を入れている部分がある。
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顧客とブランドとの結びつきのうち、コント
ロール可能なものは次の3つがある。
1 ファイナンシャルボンド
(金銭的結びつき)
2 ソーシャルボンド
(心理的結びつき)
3 ストラクチャルボンド
(構造的結びつき)
*なお、コントロールできないものとしては、
「慣性」、すなわち以前から買っているから
今回も購入する、といった購買行動がある。
これは、ブランディング施策に具体化できな
い結びつきであるため、考慮しない)
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1 ファイナンシャルボンド
ファイナンシャルボンドとは、顧客のリピー
ト購入や好意度など、ロイヤルティの高さに
対する金銭的な報酬である。いわば、ロイヤ
ルユーザーに対する「わいろ」と言える。
これは、消費者の強欲さにつけこむやり方で
あり、効果は長続きしない。消費者は、現在
よりも、さらに魅力的な報酬を求め続けるか
らである。
2 ソーシャルボンド
ソーシャルボンドとは、顧客との継続的な情
報交換を通じて、エモーショナルな関係を構
築するものである。
人は、製品選択において、合理的な判断だけ
でなく、情緒的な評価も同時に行う。したが
って、コミュニティ作りを通じてブランドに
対する帰属意識を高めたり、大切にされてい
るという気持ちを持たせることで、購買行動
を喚起できる。
ただし、どんなに心の結びつきを高めても、
それは大幅な価格差やサービスの弱さを補え
るものではない。ちょっとくらい安いくらい
ではなびかない消費者も、極めて割安な価格
を提示された場合には、「コストパフォーマ
ンス」のような合理的な判断が優ってしまう
のである。
3 ストラクチャルボンド
ストラクチャルボンドとは、顧客の個別特性
を反映させ、よりカスタマイズされた製品・
サービスを提供したり、長期契約などを通じ
て離れにくくしてしまうことである。
ストラクチャルボンドは、顧客にとって、手
間や時間を短縮できるものであれば、リピー
ト購買を行う理由を正当化する。また、長時
間かけて蓄積された知識に立脚しており、競
合の影響を受けにくい。
しかし、ストラクチャルボンドを正当化する
理由が、企業側の論理を優先していたり、顧
客には不必要なものであった場合、顧客に拒
絶され、リレーションシップを壊してしまう。
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さて、顧客との結びつきを構築・維持するた
めには、上記3つの結びつきはすべて重要で
あるが、基本的に次のような使い分けが必要
である。
・ファイナンシャルボンドで顧客をコミュニ
ケーションへと誘い、関係性を維持する。
(ロイヤルティではなく、顧客情報獲得が
主目的)
・ソーシャルボンドで気持ちの結びつきを強
化する。(ブランドに心や個性の要素を付
加することによる、ロイヤルティ醸成が主
目的)
・ストラクチャルボンドで、離れにくくする。
(ロイヤルティ向上ではなく、顧客離反を
防止することが主目的)
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(松尾所感)
ブランディングとは、基本的にブランドと顧
客との関係性のあり方のことである。
関係性構築のための具体施策には様々なもの
があるが、しばしばその施策がどんな目的に
対して効果的なのか、ということをよく理解
しないままで導入されているケースがある。
より効果的なブランディングを行う上で、上
記に示した3つの結びつきの特性と、その使
い分けの方向性は、とても役に立つだろう。 |