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●「マーケティング・ムサシ」を目指す!

ポストモダン・マーケティングを研究する意義についてご説明します。

そもそも、「ポストモダン・マーケティング」についての明確な定義はまだ固まっていません。そこで、要約しすぎとの批判を恐れず、簡潔に定義すれば、

「‘ポストモダン・マーケティング’とは、消費者を全体として捉え、その心理を深く探求し、新たなコンセプト(切り口)を見つけるためのマーケティング」

となるでしょう。

これまでの、「大量画一生産・大量画一消費」という経済成長型のマーケティングは、人を分析的に扱い、主に、購買行動についての仮説検証を行うことを通じて、「いかに買ってもらうか」「どんなものが売れるのか」といったことに重きが置かれていました。こういったアプローチは、商品(サービス)が提供する本質的な機能で満足できた時代には問題ありませんでした。(例えば、洗濯機であれば、衣服を洗浄するというのが本質的な機能です)

しかし今は、よく言われるように「欲しいものは全部持っている」ような時代です。つまり、製品(サービス)の本質的な機能だけでは売れません。ブランド力と呼ばれるような、感覚的・情緒的な要素や、環境に配慮するといった、社会的な要素など、実体のない象徴的な要素が重要になっています。

したがって、従来型のマーケティングのアプローチだけでは、消費者ニーズがなかなか見えてきません。ポストモダン・マーケティングでは、生活全体や文化といったより広い視点で、消費者を理解しようとします。購買行動だけでなく、製品(サービス)の利用体験、そして廃棄プロセスまで、消費全体を一体として見ます。そしてまた、消費行動を引き起こしている複雑な人間心理をより適確に理解することを重視します。こうすることで、新たな製品(サービス)開発につながる、新たなコンセプト(切り口)の創造を行うのです。

もちろん、これまでのマーケティング手法が、時代遅れにも、無効にもなったわけではありません。これまでのマーケティングではカバーできていなかった領域を補い、より深い消費者理解と、斬新なコンセプト創造を可能にするのがポストモダン・マーケティングです。

つまり、ポストモダン・マーケティングを研究することによって、従来型のマーケティング手法だけの‘一刀流’マーケターから、ポストモダン・マーケティング手法というもう一つの刀を使える、‘二刀流’マーケターへと変身できるというわけです。二刀流の剣士、宮本武蔵にあやかり、「マーケティング・ムサシ」を目指しましょう。

現代の消費者は、一人十色と言われるほど、変幻自在でつかみどころのない存在です。あまりいい喩えではないかもしれませんが、一刀流では斬れません。二刀流の「マーケティング・ムサシ」が活躍する時です。
 
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